臨床心理士がさまざまな心の問題にお応えします。岐阜市と名古屋市に心理カウンセリングを行う相談室があります

こころの問題とは

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Bさんのケース(40代女性)

Bさんは2人の娘さんをもつ40歳の女性です。これまで夫と娘たちと平和に暮らしていましたが、転居をきっかけにして体調を崩し始めました。ちょうど次女が思春期に入り、高校生なのに喫煙、深夜帰宅するなど心労があったことに重なり、うわさ好きの近隣住人からあれこれ詮索されるようになったからです。良妻賢母として家庭に力を注いできたBさんにとって、子どもの非行行為はもちろんのこと、自分も含めて近隣から後ろ指を指される立場に立たされていることは、Bさんにとって耐えがたい屈辱でした。次女を諭そうとすればするほど、次女はBさんへの反抗を強めます。夫は「放っておけ」と言うばかりで、頼りになりません。Bさんは、子どもへの関わりを相談するために、心理相談室を訪ねることにしました。
思春期の子どもが扱いにくく、親が悩むのはよくあることです。こんなときに助けになるのは、自分が思春期にどう過ごしていたかという体験です。「どうしようもなく親がうっとうしい」「仲間の言葉は信じられるのに、親のいうことには耳を傾けられない」「親を傷つけるような言葉しか吐けない」思春期を体験したことのある大人は、子どもがどれほど反抗しとんでもない行動をとっていたとしても、その背景に親への罪悪感や成長にプラスになる体験があることを想像できます。反抗期の心理が想像できるからこそ、大人はとんでもない時期を耐え忍ぶことができるのです。一方、Bさんは自分が品行方正、良妻賢母で生きてこられたため、次女の反抗にプラスの意味を見出すことが難しかったようです。そんなBさんには、以下の視点からお手伝いしていくことになりました。

  1. 次女の反抗期への対応
  2. ライフサイクルとしての子離れの課題
  3. Bさん自身の親への反抗期と自立の問題
Bさんにも不眠やいらいらなどの症状がありましたので、病院をご紹介し、抗不安剤を服薬しながらのカウンセリングとなりました。カウンセリングでは、次女の理解しがたい行動が中心的な話題となりましたが、カウンセリングが進むにつれて、Bさんは自分が思春期にしたかったことを次女がしているのではないかと思うようになっていきました。すると不思議なことに、Bさん自身も良妻賢母であることに嫌気がさしてきて、両親に反抗し、夫に喧嘩をふっかけるようになりました。次女とのぶつかりあいを通して、Bさんは今の時代を生きる若者の苦悩を知り、新たな理解のもとに次女への関わりを築き直します。それと同時に、夫との関係も変化していきました。

Bさんは子どものためにカウンセリングを受けたつもりでしたが、カウンセリングを終えるときには、自分が自分らしい人生を生きるためにも、このような機会が必要だったのだと気がつきました。