女性臨床心理士が主宰する岐阜市のカウンセリングルームです。職場ストレス・子育て・不登校・発達障害など、心の問題や悩みにお応えします。
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学び方の違いとしての発達障害
2012-08-10
当室の考え方
発達障害という言葉は、聞きなれない人ほど、「障害」という言葉の響きが重く感じられるのではないでしょうか。確かにこれまでは、「障害」は「ハンディキャップ」と捉えられ、マイナスのイメージを持って使われてきました。(M記)
その子に合った教え方
しかし近年、脳機能の研究から「発達障害」は「学び方に違いがある」と考えるべきだと言われています。つまり、独自の学び方(発達の仕方)をする人たちがいる=「発達障害」ということです。
そう考えると、発達障害を持つ子どもに「特別支援」が必要だとする学校現場の流れも頷けます。発達障害を持つ子どもは、その他多くの定型発達の子どもたちとは「学び方が違う」ので、その子どもにあった「特別」な教え方が必要なのです。
よく「なんであの子だけ特別扱いされるんですか?」という
疑問を耳にします。これは「特別扱いされている」子どもの保護者の方にとって、心苦しく感じられる言葉です。しかし、発達障害を持つ子どもが「特別支援」を受けることは、決して「特別扱い」ではありません。
1つの社会の中に適応して生きていく力を培うことが教育の目的であるならば、脳機能の問題で学習の入力や出力の仕方が独特な子どもに、臨機応変に教育を行なうことが教育だからです。一律の教育にすべての子どもたちを適応させることが、教育の目的ではありません。多数派か、少数派かという点で、少数派に行なう教育を「特別支援」と名付けられているだけで「特別扱いする」という意味ではないのです。
誰にでも凸凹はある
発達障害は「(多数派と)学び方が違う」ことがわかりましたが、個々の特徴をよく見ると、発達の凸凹(得意と不得意)は発達障害の子どもたちの中でもそれぞれ違っています。多数派の人でも経験があると思いますが、英語の単語を覚える時、ある子は「書いて体で覚える」のが得意なのでノートにいっぱい単語を書きますし、ある子は「見て覚えるのが得意」なので単語カードを電車の中でも見てたりします。それぞれの子が、自分の記憶の入力・出力の得意不得意を活用し、学習に生かしているのです。多数派でも、このような凸凹はありますが、少数派になりますと、凸凹は顕著に学習に影響を及ぼします。不注意や視覚認知の混乱が強いために、単語ではなくアルファベット自体を正確に記憶に入力できない・正確に出力できなかったり、手先の不器用さ・目と手の協応がうまくいかないために、定規で線を引くと必ずズレてしまったり、といった具合です。
さらに、少数派の発達の凸凹は幼少期から存在するので、生活スキルや対人関係スキルなど、社会で生きていくために必要不可欠な部分にも影響を与えます。多数派が仮面ライダーなどに興味がある頃、少数派は道路標識に夢中です。すごい記憶力で標識を覚えていき、自分の世界で満足しています。得意なのは「良いこと」ですが、みんなとは違うことが生活と成長に影響を与えます。多数派は友達とライダーごっこをして、遊びのルールを身に付けます。「顔や頭を叩いたらダメ」「役割は交代しないと、友達が嫌がる」「仮面ライダーよりも友達の方が好き」「仲良く遊びたい」。こうした気持ちは、対人関係スキルを身に付ける大きな原動力となります。しかし少数派の子は、道路標識に夢中で、それを誰かと分かち合うことができません。また、発達の凸凹によっては、自分の好きなことだけを好きなだけ話してしまい、相手がその話や自分をどう思っているかまで考えられません。「友達が嫌がる」から自分の行動を変えよう(コントロールしよう)と思うには、相手が嫌がっていることに気づかないといけませんが、そのために必要な「表情を認識する能力」や「他者の感情を理解する能力」が弱い子どもがいるのです。このように発達の凸凹は、凸でも凹でも少数派の子どもたちの体験する世界を制限し、その後の発達や社会適応に大きな影響を与えていきます。
凸凹を個性にする
発達の凸凹があったとしても、幼少時から適切な療育や支援を受けますと、体験の差からくる能力・スキルの凹みをカバーすることができます。「特別」な教え方で発達を促すことで、成人した頃にはちょっと苦手なものが「個性」となり、社会人としての生活を送れるようになります。発達の凸凹が「障害」を決定するのではなく、生まれつきの発達の凸凹にどのような環境が与えられるかで決まるのです。
もちろん凸凹は人によって異なるので、支援によって補うことが難しい凹もあります。また、まわりに理解されるまでに叱責やいじめを受けた場合には、そうでないよりも適応を難しくするでしょう。確実に言えることは、早期に発達の凸凹を発見し、環境や本人・家族への支援を整えることが重要なのです。
はじめに伝えたいこと
臨床心理士としての相談場面で、「この子は発達障害なんでしょうか?」と保護者の方に尋ねられることがあります。そういう時、私はまず、その子がどんな子なのかを詳しく知りたいと思います。どんな発達の凸凹を持っているのか。今何を困っているのか。どんな環境で育ってきたのか。今どんな生活をしているのか。そうした情報をつなぎ合わせて、その子の「ストーリー」が出来上がってきた時、子どもと家族に何をお伝えするべきかがはっきりしてくるように感じています。そして、保護者の方の知りたいと思われていることは、発達障害かどうかではなく、「今この子に何をすべきか」なのだと思います。
参考資料:
「はじめの一歩だよ みんなでサポート編」特定非営利活動法人 アスペ・エルデの会
監修 辻井正次 執筆 中島俊思
発達障害
トピック
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2012-08-10
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